男性の乳がんの症状や原因、治療方法とは?

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男性の乳がん(読み:だんせいのにゅうがん)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、医科サプリ編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
藤田亨 医師(皿沼クリニック 院長)

男性の乳がんとは

男性の乳癌罹患率は女性患者の1%程度の頻度であり,女性に比べ5~10歳程度高い年齢層に発症する。発症のリスク因子は,男性乳癌の家族歴,高エストロゲンを呈する睾丸疾患(停留睾丸,睾丸炎の既往,外傷),高エストロゲンを呈する状態(Klinefelter症候群,エストロゲンやテストステロンの使用,肥満,5αリダクターゼ抑制作用を有する男性型脱毛症治療薬や前立腺治療薬),胸壁放射線照射の既往,運動不足等である。男性乳癌患者の約15~20%は家族歴を有する。

引用:日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン
https://jbcs.gr.jp/guidline/guideline/g1/g10350/

藤田亨 医師(皿沼クリニック 院長)ドクターの解説
男性の乳がんは、乳がん全症例の1%であり、大部分の男性は乳がんにかかると思っていません。すなわち油断があります。乳房にしこりができても、乳腺外来に女性患者が多いことを気にして受診せず、放置してしまうのです。その結果、早期発見・早期治療ができず、予後不良となることが多いです。女性化乳房は、初期慢性腎臓病の治療に用いるカリウム保持性利尿剤「アルダクトンA」(一般名:スピロノラクトン)を内服することで生じる可能性があります。男性の乳がん発症の背景には、近年、男性の初期慢性腎臓病が増えていることも影響していると考えられます。

男性の乳がんの症状

乳輪下の固い腫瘤で発症します。時に腋(わき)の下のリンパ節に転移したのを触れることがあります。

引用:川崎市立井田病院
http://www.city.kawasaki.jp/33/cmsfiles/contents/0000037/37855/ida/shinryou/nyuusen/nyuusensymptom.html

藤田亨 医師(皿沼クリニック 院長)ドクターの解説
男性の乳がんの場合、主に乳輪の下あたりに硬い腫瘤が現れます。また、女性の場合と違い、男性の乳がんでは痛みを伴うケースが多いとされています。男性の場合は、女性のように乳房のふくらみが邪魔をしないため、触診で腫瘤を見つけやすいはずです。しかし「まさか男性の私に乳がんが」という思い込みから症状を放置するケースが多くなっています。男性であっても、硬い腫瘤や痛みがある場合は、乳腺外来を受診してください。心理的ハードルが高い場合、既婚者であれば配偶者に同伴してもらう等の工夫をすれば羞恥心を克服できるのではないでしょうか。

男性の乳がんの原因

男性の乳がんのリスクを高める要因に、放射線への曝露や体内のエストロゲン(薬剤詳細へ)量の増大、乳がんの家族歴などがあります。
疾患が発生する危険性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子を持っていれば必ずがんになるというわけではありませんし、リスク因子を持っていなければがんにならないというわけでもありません。リスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。男性における乳がんのリスク因子には以下のものがあります:

・放射線に曝されること。

・体内のエストロゲン量の増大に関連する疾患(肝臓疾患である肝硬変や遺伝性 疾患であるクラインフェルター症候群など)があること。

・乳がんにかかったことのある女性近親者が数人いること(特にその近親者が変異したBRCA2 遺伝子をもつ場合)。

男性乳がんの一部には、遺伝によって親から受け継がれた変異遺伝子がその原因となっているものも含まれます。
細胞の内部には遺伝子が格納されていますが、そこには両親から受け継いだ遺伝情報が保持されています。乳がん全体の約5~10%は遺伝性の乳がんが占めています。乳がんと関係のある突然変異遺伝子には、特定の民族集団に多く認められるものもあります。 遺伝子に乳がんに関係する突然変異がある男性では、乳がんのリスクが高くなります。

引用:がん情報サイト PDQ®(Physician Data Query®)日本語版
http://cancerinfo.tri-kobe.org/pdq/summary/japanese.jsp?Pdq_ID=CDR0000062969

男性の乳がんの検査法

身体診察と病歴聴取:しこりなどの通常みられない疾患の徴候に注意しながら、総体的に身体を調べる診察法。患者さんの健康習慣、過去の病歴、治療歴なども調べます。

臨床的乳房検査(CBE):医師またはその他の医療専門家が実施する乳房の検査法。医師が乳房とわきの下の触診を入念に行って、しこりなどの異常がないかを調べます。

超音波検査:高エネルギーの音波(超音波)を内部の組織や臓器に反射させ、それによって生じたエコーを利用する検査法。このエコーを基にソノグラムと呼ばれる身体組織の画像が描出されます。この画像は後で見られるように印刷することもできます。

MRI(磁気共鳴画像法):磁気、電波、コンピュータを用いて、体内領域の精細な連続画像を作成する検査法。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。

血液生化学検査 :採取した血液を調べて、体内の臓器や組織から血液中に放出される特定の物質の濃度を測定する検査法。ある物質で異常な値(正常値よりも高い値や低い値)が出るということは、疾患の徴候である可能性があります。

生検 :細胞や組織を採取する手技のことで、採取されたサンプルは病理医によって顕微鏡で観察され、がんの徴候がないか調べられます。生検方法には以下のものがあります:
穿刺吸引生検 (FNA生検):細い針を用いて組織または体液を採取する。

コア生検 :太い針を用いて組織を採取する。

摘出生検 :しこりの組織全体を摘出する。

引用:がん情報サイト PDQ®(Physician Data Query®)日本語版
http://cancerinfo.tri-kobe.org/pdq/summary/japanese.jsp?Pdq_ID=CDR0000062969

藤田亨 医師(皿沼クリニック 院長)ドクターの解説
検査や治療法は女性の場合とほぼ同じで、マンモグラフィやエコー検査の後、病理検査で診断します。男性にも女性ホルモンはあり、通常は男性ホルモンとバランスを取り合っています。女性ホルモンは肝臓で分解されますが、肝臓機能に障害があると代謝されず、体内の女性ホルモンが異常に増えることがあり、乳がんリスクを高める女性化乳房を生じやすくなります。また、肝臓機能の低下には、肝臓がんや肝硬変などが潜んでいる場合があるので、注意が必要です。このほか、精巣がんや遺伝子異常のクラインフェルター症候群なども女性化乳房の引き金になります。

男性の乳がんの治療方法

通常の乳癌と同様に手術します。男性乳癌は腫瘤の部位が乳輪下であるので、多くの場合、乳房全摘手術が必要になります。エストロゲンにより増殖が促進される性質をもつホルモン受容体陽性例が多いので、ホルモン薬による内分泌治療が行われます。

引用:川崎市立井田病院
http://www.city.kawasaki.jp/33/cmsfiles/contents/0000037/37855/ida/shinryou/nyuusen/nyuusensymptom.html

藤田亨 医師(皿沼クリニック 院長)ドクターの解説
男性の乳がんでも、手術療法やホルモン薬による内分泌治療が行われると上記に書いてありますが、ホルモン薬による内分泌治療は肝臓に大きな負担がかかる点がデメリットです。男性の乳がんの場合、肝機能が低下し、肝硬変が進行していて女性ホルモンが代謝されず、女性化乳房から乳がんへと進展するケースがあります。この場合はホルモン薬による内分泌治療を選択できないことが多いようです。また、手術療法は全摘が必須なので、患者さんに大きな身体的負担がかかります。

この記事の監修ドクター

藤田了 医師 皿沼クリニック 院長藤田亨 医師
皿沼クリニック 院長

PROFILE

平成3年3月 慶応義塾大学 医学部卒業 70回生
平成3年4月 慶応義塾大学病院 内科 血液研究室入局勤務
平成8年5月 市川総合病院勤務
平成9年7月 ソニー株式会社 医務室勤務
平成10年3月 皿沼クリニック開設 院長となる
平成14年2月 医療法人社団 永徳会 設立 同会 理事長就任
平成14年7月 医療法人社団 永徳会 皿沼クリニック始動 現在に至る

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